■感性と理性とを育む「環境創造」からの人材育成
持続可能でウェルビーングな社会の実現には、感性や感動、人間性、多様性への理解等を重んじるアートを活動の根底に据えた人材育成が今後益々重要になるとの意識のもと、先端アートデザイン分野(AAD)と連携して、「A(アート、アーツ)」とサイエンスを融合したSTEAM教育を開発、実践し、研究にもフィードバックしていきます。
具体的には、芸術家との対話や関係づくりと、演奏や作品に触れる機会の提供、効果検証や仕組み作りなどが含まれます。
■「共創」と「ゼロイチ」
研究者による研究内容の発信は、アウトリーチとして広く行われてきたところで、その際の発信者側の視点は、主に、自身の研究成果を社会に還元すること、広く当該研究分野への理解を深めてもらうことにあります。
一方で、子供たちに教育として提供する際には、相手の発達段階や習熟度に応じた内容で提供することが重要ですし、教育課程の中で行うか外で行うかによって手法も異なります。単発のイベントで終わらないためには、学校の授業との連携や事前事後学習も重要です。そうした教育上の視座に基づき、相手先と対話を通じて、最適なプログラムを創っていくことをモットーとしています。
また、新領域の開拓を組織ミッションとする先端研らしさを、AEOも踏襲します。他で既に広く取り入れられている手法―例えば一般的な形での出前授業や研究室訪問の受入等―よりも、新たな教育モデルやプログラムの開発や実践により重きを置き、そうした取組が可能な案件を優先的に取り扱っています。
AEOが学校や自治体と、大学のリソースとの、効果的なインターフェイス機能を果たし、検証も行いながら、大学によるアウトリーチ活動や次世代育成のモデルを創っていけるよう、取り組んでいきます。
■ロゴについて
アートとサイエンスの融合、感性・人間性に基づく論理性・知性という価値軸を象徴するため、書道で用いられる篆刻を用いて制作しました。円形は無限の広がり。時おり欠けているのは、篆刻で一般的に用いられる手法ですが、既存の枠組みや現状を打破して無限に広がる可能性を示唆しています。AEOの文字の構成は、先端科学技術の尖鋭さを造形し、サイエンスの論理性、客観性を紺(青)で表現しました。内輪の赤は、活動の根源となる情熱や感動を意図しています。
書家・篆刻家 雨宮太虚 作。
<制作者の言葉(抜粋)>
先賢によるローマ字での篆刻の試みはありますが、迂生なりにデザイン性と篆刻表現本来の力強さを目指して見ました。単にデザイン性だけでしたら手描きで修正を加えつつ完成させる、またはPCアプリを用いて制作する方が合目的的でしょうけれども、篆刻は印刀という刃物を用いて石材や木材を刻します。そこに手描きやPCでは現しきれない刀意による強さが宿ります。それは“教育”というものが最後には人間がそこに対峙しなければならないという本質にも繋がるものかもしれません。己の意図から外れ不可逆的な刀意、欠けが生まれることもあります。そうしたハプニングが却って超克的な表現にもなりますが、これも直に学生や生徒に対峙する何かに通じることがあるでしょうか。